懸命に手を伸ばした。あなたも手を伸ばした。指先が触れた。私の手は空を掴んだ。
目が合った。あなたは優しく微笑んだ。
落ちていく。私の手は届かない。指はもう触れることはない。
堕ちていく。あなたは言う。ここに来ることはない、と。正しくあれ、私のようになるな、と。
でも、私はあなたと一緒にいたかった。私を育ててくれたあなたが堕ちるなら、私も共に堕ちたかった。
落ちていく。優しい笑みを浮かべたまま、あなたは落ちていく。私を一人残して。
叫び声が聞こえる。自分の喉から発されているのだと、しばらく気づかなかった。
背後に、複数の人の気配がする。
私の最愛の人を落とした、堕としたお前たちを、私は許さない。
ゆっくりと振り返る。
ねえ、あなたのところまで、私は堕ちるよ。そうしたら、またあなたに会えるよね。
親不孝者でごめんなさい。
大勢に囲まれても、私はちっとも怖くなかった。
落ちてしまえば、あなたに会えるのだから。
11/23/2023, 2:00:24 PM