崖から見下ろすと、そこには広大な海と登りかけの朝日があった。波が岩に当たる音だけがやけに響く。まるで、それ以外の音という音が取り除かれたみたいに、空気を振動させている。
僕は深呼吸をする。冷たい空気を肺にいっぱいにいれ、その状態を少し維持する。そして、味わうように長く息を吐く。これで、僕もこの場所に認められた。
波の音と僕の呼吸する音、そして時折聞こえてくる鳥のさえずり。日の周りの空がやけに赤くなった。朝日と地平線は円と接線のように最後までお互いに触れ合っていた。朝日は責任をもって、時間を前に進めている。世界はそれを辛抱強く待っている。
2/6/2025, 5:15:04 PM