――あと十分。
時計を睨みながら、息を殺してその時を待つ。
深夜の交差点。その端で一人、日付が変わるのを待っていた。
交差点は境界なのだと誰かが言っていた。そして時間は稀にループするともいう。
頭から信じているわけではない。ただ、もしもの世界があるのなら、それを試してもいいのではないかとも思っている。
――あと三分。
時計の針が進んでいく。時間は止まることなく流れていく。
もしもがあるのならば。
考えるだけ無駄だと分かっている。過去に戻れたとしても、きっと起こってしまったことは変えられない。
それでも。刹那の夢だとしても。
あの日、あの時。
家に残っていたのが自分の方だったのならば。
――あと一分。
時計の針を見ながら、交差点に近づく。聞こえないはずの針の音が聞こえた気がして、鼓動が速くなる。
――五、四、三……。
心の中でカウントダウンをしながら、足を踏み出す。
――一……。
時計が十二時を告げたと同時、交差点の中心に立った。
10/13/2025, 9:14:59 AM