いす

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違いはわからないがお前が秋風だというのでそうなのだろう。四六時中吹いていて、私はただ晒されている。無風とやらもあるらしいがここはひっきりなしである。風たちがこうしてずっと喚いているから寂しくはないが、お前の声を容易く聴き逃してしまうので私はそれなりに必死だ。お前は無の魔法使い。いつか私にやさしく言った。
「止めて欲しいか?」
出会った最初の日だったような気もするし、今しがた言われた気もする。
「何を?」
お前は片眉を吊り上げる。私のからからに乾いた喉から出る小さな音をお前は難なく拾って見せる。止めて欲しいものがあるとすれば、いまこの瞬間。お前が笑ってみせる、不機嫌になってみせる、疑ってみせる、またねと私に背を向ける瞬間、やさしいだけのいまこの瞬間だよ。

11/14/2023, 4:05:33 PM