ヒノエ

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「見つめられると」
 




 困る。

 そんなに見つめられると。

 わたし、自分でいうのもアレだけど、
すごい内気なんだよー……。

 しかもこんな大勢、人がいる場所で。
 週末の、混みあってるレジだよ?
 うしろには、会計を待つ長い列ができてる。

 なのに。
 わたしのことだけ、じっと見つめてくる。
 恥ずかしすぎる……。

 なにを期待されてるかは、わかってる。
 応えないと終わらない気が、すごくする。
 もう、勇気を出せ。
 自分。

 しずかにゆっくりと深呼吸をする。
 緊張でふるえる指で、ピースサインをする。

「あら、ありがとうございます。この子につきあわせちゃって、ごめんなさいね。
 勇人クン、レジのお姉さんにありがとってしなさい?」

ゆうとクンは、にこりともしない仏頂面で、わたしを見つめたまま、不動のピースサインの残像を残し、お母さんにぐいぐい手を引かれて、そして見えなくなった。

 ああ、良かった。なんとかうまく乗り越えた。

「お待たせいたしました」
そう言いながら、次のお客さんの、食品がたくさんつまったカゴを引き寄せる。

「いいのよー、可愛い男の子だったわねえ」

「そうですね……」

 いちばん上に乗っているもの。
 これは。

 ふるえる手で、ぎょろりとわたしを見つめるニジマスのパックを手に取り、バーコードをスキャンした。
 ニジマスは、わたしに目玉を向けたまま、お客さんのマイバスケットにおさまった。

 まだ見つめてる。

 まだ見つめてる……。
 



           終

 
 

3/28/2026, 11:59:36 PM