【脳裏】
波打ち際で月光と踊る君の姿を思い出す。白いワンピースの裾がひらひらと、誘うように揺れていた。
君と過ごした最後の夜の記憶。素敵な思い出をありがとうと微笑んで、君は夜の海へと還っていった。
寄せては返す波の狭間へと、そっと手を差し入れる。冷たい温度がまるで、君の手のひらのようだった。
(ずっと、ずっと、君だけを愛してる)
たとえ君が人間でなかったとしても。海から生まれ海へと還る、人間の形を模しただけのただの化け物だったとしても。それでも僕にとっては、君だけが世界の全てだった。
脳裏に焼きついた君の、はにかむような笑顔をなぞりながら。遥か遠い海原へと永遠の愛を捧げた。
11/10/2023, 3:50:38 AM