海月 時

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『お前を殺してやるよ。』
私はこの言葉に強く惹かれていった。

『人間を殺すのは辞めなさい。』
私が叱ると、彼は鬱陶しそうな顔をした。私と彼は、天使と悪魔だ。天使は死者を救い、悪魔は死者に罰を与える元人間。それなのに、彼は生きている人間を殺してしまう。許されるはずのない事だ。
『お前には関係ないだろ。彼奴等は死んでもいいんだ。』
『死んでいい人間なんていません。』
『善人ぶってんじゃねーよ。』
彼はそう言って、立ち去った。

私には秘密がある。本当は彼の事が好きだ。自由奔放に生きる彼に惹かれた。自分とは真逆な彼が好きだ。この気持ちは伝えれない。天使と悪魔だからだ。交わってはいけない、二つの生命。あぁ、こんな事なら悪魔になりたい。

『おい。何やってんだ。』
彼が私に聞く。私は今、人間を殺した。もう天使は疲れた。彼と共に生きれるなら、悪魔に堕ちたいと思った。
『これで私は、善人ではなくなりましたね。』
『そんな事はない。お前は死ぬまで天使だ。』
やめてよ。そんな事言わないでよ。
『俺はお前を殺す。そうしたら、お前は天使のままだ。』
何て無茶苦茶な事を。私は思わず笑ってしまった。
『駄目ですよ。天使殺しは、大罪です。』
『俺は沢山の人間を殺した。罪の意識なんてね―よ。』
彼の大鎌が、私の首に掛かる。痛みはなかった。ただ終わるという感覚が、宙を舞った。

彼は、最悪の大罪人。そんな彼を愛し、罪を犯した私は、最悪な天使。最悪な二人の間には、最高の絆があった!

6/6/2024, 3:21:28 PM