お題 こんな夢を見た
人を、殺した。
ナイフを持った通り魔に襲われて、必死に逃げた。
いやだ、死にたくない、なんでわたしが、だれかたすけて。
とにかく前へ前へ走って。
気づけば背後に迫った通り魔を、持っていたバックで思い切り殴った。
そしたら割合簡単に相手がよろめいて、バランスを崩した。
そこは橋の上だった。
へたり込んだまま、ぼちゃんと言う音をどこか遠くで聞いていた。
偶然現場を見ていた人もいて、私の行動は正当防衛として扱われた。
それでも、私は恐ろしいのだ。
通り魔が落ちる瞬間見せた、目出し帽から除く、瞳孔の開いた目が、何度も脳裏を過ぎる。
人一人が死ぬ原因になったという事実が、私の首をゆっくり静かに閉めていく。
警察から勧められたメンタルクリニックを出て、私はため息を着く。
もう何ヶ月も通っているのに、症状は快調の兆しすらない。
どころか、このままいくと悪化することもあるそうだ。
あぁ、なんで私がこんな目に
「わすれないぞ。」
足が止まる。
「おまえはいっしょう、おれにつぐないつづけるんだ。」
息が上手く吸えなくなる。
そんな、まさか。
恐る恐る、後ろを振り向く。
目出し帽が、私を呼びさして言った。
「おまえが、おれをころしたんだ。」
ぱっと目が覚める。
なぜだか、ひどく息切れを起こしていた。
「あれ、ここは…」
目の前にはテーブルと、半端に開かれた本。
それに、よだれの跡。
「…なんだ、夢か。」
どうやら、本を読むうちに寝てしまっていたようだ。
口に付いたよだれを拭い、『文鳥・夢十夜・永日小品』と題された本を、本棚にしまう。
さて、そろそろ行かないと。
あそこの橋は長いから、今日は少し余裕を持って行かなくちゃね。
1/24/2024, 2:52:10 AM