抜けるような青が天上に広がっている。
(あのときのことなんて夢みたい)
ニェナは空を仰ぎながら胸中でつぶやいた。
(……でも、夢じゃない)
森の奥で見つけた洞窟の地下に広がっていた広大な廃遺跡。その封印を解いてしまったことで始まった異変。異変は厄災となって、この街から徐々に国を、大陸を侵食していった。厄災を解決するために、この街はもちろん、国を挙げて探検隊が組まれたが捗々しい成果はなかった。
ニェナはいてもたってもいられなかった。お前のせいではない。封印は弱まっており、いずれ勝手に封印は解けていた。色んな人がそう言って、彼女を慰めたものの、罪悪感は拭えなかった。自分には関係ないと見て見ぬふりはできそうになかった。
それからはがむしゃらに遺跡の探索をした。洞窟を進み、地下湖を見つけ、廃宮殿を探索した。いつしかニェナの進んだ道は、他の探索者の進む導となった。
色々な探索者が廃遺跡を探索するに従って、旧文明の遺物を売り買いする者が格段に増えた。いつからか国は遺物を利用した他国への侵略を行うようになった。街を含めた国が混乱に陥る中、ニェナのやることは変わらなかった。
廃遺跡の更に深部、大墳墓を探索し終えたニェナが少し立ち止まったとき、がらりと様相が変わった街がそこにあった。昼夜問わず空は黄昏に覆われており、常に薄暗く、常に薄気味悪く、世界が精彩を欠いていた。
大墳墓の奥に眠っていた厄災の元凶を追って、ニェナは天涯に向かった。幻想のような宮殿を進んだ先に元凶はいた。それはニェナを苦しめたが、死闘の末、彼女はそれを打ち斃した。
世界を覆った黄昏がベールを剥がすように消えていく。
長い間、厄災に苦しめられて、ずっと空は黄昏に覆われていたような気がしたが、厄災が始まってから三年、黄昏が空を覆うようになってからまだ三月しか経っていない。その短い期間で、街を含めた大陸のあちこちが被害を受けて、破壊されてしまった。
復興への道のりは遥か遠くにある。それでも、明日に向かって歩いていく。でも、時には立ち止まって後ろを振り返ってみる。一人で歩いているように思っても、その後ろにはたくさんの人が自分を見守ってくれていることを、思い出すために。
1/22/2025, 2:15:03 AM