三羽ゆうが

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人を好きになるという気持ちを知らなかった。知る必要が無かったから。1人が好きだった。他人に気を遣わなくていいから。


けれど。


『大好きだよ』

「私も大好き!」

スマートフォン越しに笑顔を見せる。通話時間はとっくに5時間を超えていた。何を話すわけでもなく、2人ともがそれぞれの作業をしながら時折名前を呼び合う。

『ずっと一緒にいるから』

「ん、ずっと一緒」

言葉だけの誓いだとしてもお互いを確かめ合うには充分すぎる言葉だった。

初めはただの友達の友達。共通の友達がいないとお互い話さなくて、趣味も好みもバラバラな2人だった。気付いたらお互いがお互いの中で1番になっていて、引き返せない所まで嵌っていた。

『少し連絡減っちゃうかも』

「大丈夫だよ、頑張ってね!」

『ありがと』

徐々に、徐々に。違和感を感じ無い程度に連絡も通話も減っていく。通話したいと言ったら予定があると言われて、離れていく。




煩くなる心臓に、分かっていた事だと言い聞かせる。最初から分かっていた、分かって、いた。結局お前は1人だという神からの天啓みたいだ。

「𓏸𓏸さん、好きです」

「……ごめんなさい、私」

私はずっと独りでいるって決めた。


『だから、一人でいたい』

7/31/2024, 11:30:08 AM