ネジが外れたウサギ

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誰かが私の名前を呼んでいる。

でも、周りは見渡す限り背の高い木が並ぶ森。

人も動物もいなくて静寂の中に風の音が耳に当たる。

その空気が私の名前を呼ぶ声を運んでくる。


ひとりぼっちで寂しいから

いきなり何かに襲われそうで怖いから

早く声の主に会いたい。


そう思って声がする方に向かって走るけど

進んでいるはずなのに周りは同じ景色。

近づいているはずなのに声は遠のく。


「ウサギ、君はもう一人じゃないからね」

そう言ってくれてるのに

私は焦るし、涙が溢れて止まらない。

一人じゃないのに一人だと思わせるこの世界が嫌いだ

早く、会いたい。


涙で滲んだ視界の遠くの方に、

おぼろげに人の形をとらえた。


「あの!あなたは誰ですか?」

必死に叫ぶ私に向かってその人は言う。


「ウサギの求めている絆の相手だよ」

その一言を聞いた瞬間、目の前にその人がいて

私は叫ぶ。

「ごめんなさい!

 あなたの優しさに気づけなかったから」


号泣する私にその人は優しく抱きしめてくれた。


遠くの方から私を呼んでいた声の主は

私の大切な見捨ててはならない人でした。

4/17/2025, 6:17:26 AM