《君を照らす月》
「そーいや今日満月なんだってー」
「ああ、それでこんなに月がデカいのか」
11月上旬のある日の学校終わりの帰り道。この時期になると日の入りも早くなるもので、すっかり薄暗くなっている中、俺(齋藤蒼戒)はぽっかりと浮かぶ月を見上げる双子の兄、春輝の呟きにそう返す。
「そうそう。確かスーパームーンだかなんだかで、一年で1番月がデカいとかなんとか」
「そういえば今朝の朝刊の片隅にそんなことが書いてあったような……」
「すげー、新聞にも書いてあんだ……。俺の場合は今朝の放送で明里が言ってたの聞いただけなんだけど」
「ああ、そういえばそんなことを言っていたな。今夜はみんなで月を見上げてみませんか、とかなんとか」
俺の彼女でもある熊山明里は放送副委員長。なのでこうして朝の放送をしていることが多く、いい声なので彼女の放送だけはちゃんと聞くようにしている。余談だが、委員長は春輝だ。
「んだよさすがのお前も好きな女の放送はちゃんと聞くんだ〜」
ニヤニヤと春輝が笑って言うのでそれはうるさい、とぶった斬っておく。
「でも、俺月って好きだよ。なんかさ、お前みたいじゃん」
春輝がふっと夜空に手を伸ばして呟く。
「静かで、神秘的で、孤独。なんでか俺にもよくわかんねーけど、お前みたいだなって、そう思うんだ」
「…………?」
言っていることがよくわからなくて、思わず春輝の方を見ると、春輝はこっちを向いてニィ、と笑った。その顔が月光に照らされて無駄に輝いて見えて、俺は思わず目を逸らした。
「不思議だよな。蒼戒はみんなが言うほど静かな奴でも無表情な奴でもないし、孤独でもない。それは俺が1番よく知ってるはずなのに、どうしてか月を見るたびに思うんだ。『ああ、蒼戒みたいだな』って」
「…………」
「多分昔俺と蒼戒を太陽と月に例えた奴がいるからだろうけど……。だから俺、月って好きなの」
春輝はそう言って月を背負って微笑んだ。月には似合わない、太陽みたいな眩しい笑顔。俺には眩しすぎて、目を細めた。
「……それなら、俺も太陽を見てお前のようだと思うことがある。お前は……お前という光は……俺には、眩しすぎる」
月には、太陽は眩しすぎる。けれど、だからこそ、太陽に焦がれてしまうのだ。
「だけど……こういう光が、あってよかったな」
月に照らされる春輝を見て、ふっと笑った。
俺には、春輝という光は眩しすぎる。けれど、そんな光がなければ月は輝けないのだ。
「ふふっ、よかった。……んじゃ、帰るか、蒼戒!」
「ああ」
俺たちは月を見上げてお互いの存在を確かめ合って、改めて歩き出した。
(終わり)
2025.11.14《君を照らす月》
久々に書いたからめちゃくちゃだな……。フィーリングで読んでください……🙏
11/16/2025, 4:32:00 PM