昔、海は青いものだと思っていた。
実際に見たことがないから話と映像でしか知らず、うみ、は、あおい、と知識で知っていただけだ。
相棒の瞳の色だと言われてからは、たまに見つめて想像をしたりして。至近距離で見なければ瞳の色なんてわからないものだから照れて顔を押し退けられた。
人間の瞳や毛髪は色とりどりですごいなと思う。色ひとつで何かに似ているだとか連想するのだって面白い考え、感じ方だ。
こんな小さな球体に、広いと言われる海を結びつけるなんて自分には難しい。
確かに虹彩と水晶体のコントラストは吸い込まれそう、というのだったか。ずっと見ていると目眩を覚える。
なかなかどうして美しい。
今あの青は、相棒の顔に見つけられないけれど。
歳を重ねると幼い頃の色が変わることもあると聞くが、それでもあの頃そんな年でもなかったのに。
理由なんてわかっているくせに胸中であっても空惚けた。
名前を呼ぶと答えもせずにこちらに向けられる視線。
あの時より温度の変わらぬガラス玉のような瞳は浅瀬のシーグリーン。
7/31/2024, 10:16:29 AM