川柳えむ

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 空になった病室を冷たい風が通り抜けていく。今はもう誰も眠っていないベッドが少し寂しそうに見えた。
 この部屋で眠っていた人間は、あの木の葉っぱが全て散った頃に、ここからいなくなってしまった。
 いろいろあったことを思い出して、少し涙が浮かぶ。
 きっとこの部屋に来ることももうないだろう。

「帰るわよー」
「うん」

 部屋の外にいる母から声を掛けられ、私は元気よく病室を去った。
 退院おめでとう私。二度と入院なんかしないぞ!


『病室』

8/2/2023, 2:42:26 PM