【君と】
「大丈夫、大丈夫」
と言い聞かせるようにつぶやく。
冷たい床に一人で体育座りしていた。
さすがに放っておけなくて、隣に腰を下ろす。
「大丈夫だよ、きっと」
「…どうなるか、わかんない」
「誰にもわかんないよ」
予想ができないからこそ、怖くて不安になってしまう。どんな舞台でも顔色一つ変えない彼が、こんな風になるくらい。
「そう、だよな」
「うん。一緒にがんばろう」
少し声が明るくなる。
纏う雰囲気が軽くなった。
ほっとして立ち上がる。
今日は、大丈夫な気がした。
「優勝しよう、二人で」
「もちろん」
挑戦的に口角が上がる。
この一年でだいぶ伸びた髪の毛が揺れた。
「行こう」
fin.
4/4/2025, 9:15:40 AM