そう、それで貴方はまたここに戻ってきたのだ。
沢山の物語を読む──「書く」ために物語を消費する。それに言いようのない寂しさを感じて。
貴方は二度と草原に身を横たえることが出来なくなった。貴方はその草原が活版印刷による文字の羅列、恣意的な言葉の羅列だと気付いてしまっている。あまつさえ記号を認識するばかりか、そこにパターンを見いだそうと──多くは技巧を盗み出そうと──している。
現実が霞む瞬間は書くときばかりで、読むときは緊張を強いられている。貴方は思い出す。『1984年』にあったコンクリートと埃の匂いを。無骨なアパートメントを。隠れ家のベッドを。透明な文鎮の中にある珊瑚礁を。その中に一時の、読む瞬間と全く同じ安息を得たことを。
貴方はずいぶん遠い場所まで来てしまった。自己検閲の果てに、一人になることさえ出来なくなった。
11/10/2025, 2:41:21 PM