これはひと夏の、2人だけの秘密だ。
一緒に花火を見たことも手を繋いだり、体を
重ねあったことも、ぜんぶ。
「受験生だね」
「そうだね」
「「別れよう」」
あっさりした別れだった。でも、お互いこの夏のこと
を口に出すことは無く、時間は過ぎていくのだった。
その日は、とびきり星が綺麗だった。2人で星を
見上げて、綺麗だねぇと笑った。望遠鏡もないので、
分かる星をひたすらに探した。
「あ〜、勉強しなきゃね」
「そうだね〜。大学はどこ行くの?私は地元かな」
「俺は東京出るかな。」
この先も、こうやって人生は続く。宝箱に入れるように、この記憶は大切に仕舞っておく。誰も侵すことが
できないように。いつでも、取り出せるように。
「地元戻ってきてたの?」
「うん。就職で戻ってきた。」
また、出会えるかもしれないからね。
2人だけで花火を見た、あの橋の上で。
7/15/2025, 3:00:11 PM