ほーしゃん

Open App

___バカみたいだ。

青春なんて、うるさく騒いで将来なんの役にも立たない思い出にしか過ぎない。放課後友達とカラオケに行ったり、制服でテーマパークに行ったり。そんな事をしている暇があったら勉強をする方がマシだ。

休み時間、読書をしながらクラスのどの女子を彼女にしたいかという話で盛り上がる男子達を横目にそんな事を考えていた。
なんてくだらないんだ。そのうち自分は選ぶ側ではなく選ばれる側だということを認識させられるだけだというのに。


「委員長ー!何読んでるんですか?」前の席の宇佐美信長が話しかけてきた。

「…………ハリー・ポッター」

「ええっ!以外!夏目漱石とか読んでそうなのに!」

「別にいいだろ!」

「ちなみに何作目ですか?」

「5作目、不死鳥の騎士団だ。……それより、ずっと前から気になってたんだが、なぜ宇佐美は俺に対して敬語なんだ」

「だって委員長ってクールでカッコイイし……ぼくよりずっと年上のお兄さんって感じだから」……意図してクールにしていたわけではないが、褒められるのは満更ではない。

「そういう宇佐美は無邪気というか、可愛らしいな」

「か、かわいい!?カッコイイが良かったけど……でも、そうですよね。ぼくって信長っていう名前のわりに弱々しくて織田信長に申し訳ない……委員長みたいにもっとクールになれればいいのに」

「別に無理に変わろうとしなくていい。宇佐美には宇佐美の良さがある」

「……も、も〜!委員長ったら!そんなこと言われたら勘違いしちゃいますっ!」宇佐美が顔に手を当てて体をくねらせる。

「あっはは!なんだそのノリ」

「……あ!そうだ、もうすぐ夏休みですけど委員長は予定はありますか?」

「予定?特に……図書館に行って勉強をしようと思っていたが」

「さっすがマジメ!でもそんな委員長には少し休息が必要じゃないですか?」

「休息?」宇佐美は誇らしげに手を腰に当て口を開いた。

「ぼくと一緒に行きましょう!USJ!」

「は」

_____________________

「……着いたー!!」

「来てしまった……」

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン。USJ。ユニバ。世界でも大人気のテーマパークに俺は宇佐美と遊びに来ていた。

「やっぱり夏休みだから人が多いですね!」

「ああ、そうだな……」

「委員長は初めてでしたっけ?USJ!」

「ああ。テーマパーク自体まだ小さい弟がいてなかなか行くことができない」

「そうなんだ!じゃあ、今日はいっぱい楽しみましょうね!」

初めはハリー・ポッターのエリアにきた。

「委員長のこと連れてきたかったんですよね!ハリポタ好きなんでしょ!?」

「いやまあ、好きだが……」

「あ!あそこ、魔法が使えるとこですよ!行きましょ!」

「あ、おい、走るな!」すみませんとわざとらしく舌をペロっと出す宇佐美は、いつもより活き活きしている。

「委員長!まずはぼくがお手本するので見ててくださいね!」

そう言うと宇佐美は慣れた様子で杖を動かした。真っ白の雪が降る。

「どうですか〜!?すごいでしょ!」

「ああ、凄いな!慣れてるんだな」

「ふふん、委員長もどうぞ!」

杖を借りて見よう見まねで動かす。少量だが雪が降った。

「……降った!」「さすがです委員長〜!!」達成感で心が躍る。街並みもさることながら、実際に本の中の世界にいるようで夢見心地だ。

「前に買った杖持ってきて良かったです〜!」

「ああ。助かったな」

「このあとは……やっぱりアレですね!」
「アレ?」

_____________________

「ぷは〜!」「思ったより甘いな」
美味しいですねと宇佐美が笑顔を見せる。バタービールを飲みに来ていた。

「あ、委員長泡のヒゲついてますよ〜!ギャップ萌えってやつですね!カワイイ!」

「かわいいって……そういう宇佐美もついてるぞ」

「え!ちゃんと舐めたつもりだったのに〜」

アハハと2人で笑い合う。宇佐美といると心地いい。雰囲気が明るくなる。


___散々楽しんだ後、帰り道。

「は〜、楽しかったですね!特にジェットコースター乗った時の委員長には笑っちゃったな〜!」

「宇佐美こそ、乗る前は緊張で吐きそうだったじゃないか」

「あ〜!もう!それ禁句です!」

「あはは、ごめんごめん……今日は連れてきてくれてありがとう。宇佐美のおかげで忘れられない日になった」

「ぼくも楽しかったです!委員長も楽しめましたか?」

こんなに胸が高鳴るのはいつぶりだろう。また楽しい時間を過ごしたいと、期待している自分がいる。

「ああ。宇佐美といると楽しい。また俺と遊んでくれるか?」

「わ……!もちろんです!今度はディズニー行きましょう!!」

__青春なんて無駄だ。遊んでいる暇があったら勉強する方が将来のためになるのに。
知らなかった。好きな友達と遊ぶことがこんなにも楽しいなんて。

「まったく……」

宇佐美の眩しい笑顔を見ながら口を開く。




「バカみたいだ!」




『バカみたい』


USJに行った事がないのに話のネタにしたのを激しく後悔しています。間違いがあったらすみません。

3/23/2024, 8:26:01 AM