電車に乗って。
吹き抜ける風をただ心待ちにして、いつかを思う。
文化祭、体育祭、なんてことない日常。
今の3日分が1日分で、エネルギッシュで青さに満ち溢れていたいつかを。
定期テストの辛さも今なら思い出だ。
結局大人になれば離れられると思っていた勉強は、今でもずっとつきまとう。
私は勉強が本当に嫌いだったし暗記も苦手だったから、今の大手ではないけどそこそこの会社でもあまり良い成績を残しているわけではない。
でも、取り忘れていた有給をとることを勧められるくらいには一応真面目に働いていたつもりだ。
5日ほど纏めてとらされた有給を消化するため、今どこにいくかも決めずに当てのない放浪をしようと揺れる座席に座っているのだから。
景色がどんどんとすぎていく。
ああ、今視界から消えて見えなくなったあの山ももう『過去』。
ほんの少し前までは『現在』だったのに。
さぁ。
行き先はどこにしようか。
金なら一応あるものだから、県を越えたって良い。
時間も余ってるようなものだ。
せっかくだし、過去……つまりは過ぎた日々を懐かしんだついでに青春の友のところへと行ってみようか。
驚く顔が目に浮かび、思わず最近不機嫌に固まっていた口角が上を向いた。
それがいつぶりだろう……と考えていた自分に驚き、あんまりにもあんまりな状況に陥っていたことに苦笑を漏らす。
そういえば、ここ1ヶ月は推しの配信さえもスルーしていた。
いつもなら彼女の明るい声を愛で、ゆるゆるとした元気を貰っていた筈なのに。
悪循環、自省しかない。
思わず天を仰いだ視界の隅。
つり革が並んだ電車の天井から、はみ出している鮮烈なまでの青と白。
嗚呼、今日はきっと旅行日和だ。
過ぎた過去がもたらしてくれた贈り物。
せいぜい楽しむとでもしよう、とため息をひとつついてそのまま目線をずらして空に魅いられることにした。
10/6/2024, 1:54:16 PM