わをん

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『1年前』

1年前の6月ももう今年が半年過ぎたのかと言っていた気がする。今年の抱負を思い出そうとするけれど何を決めたのか忘れてしまった。花見はしたのだったか、連休はどう過ごしたのだったか。1ヶ月前どころか昨日に何を食べたかの記憶もおぼつかない。
「年かな……」
日曜の夕暮れも近づく頃、ゴロゴロしながらテレビをエアコンの効いた部屋で眺めていると、買い物に出ていた妻とこどもたちが帰ってきた。
「お父さんたら、いつまでそんな格好してるの!今日は出かけるって言ってたでしょ」
「えぇ、そうだっけ」
「そうだよお父さん!早く髭剃って寝癖直して着替えて!」
「いつもみたいにビシっとして!」
たまの休みにゴロゴロダラダラするのが生き甲斐なのになぁと思いながら身支度を整えてリビングに戻ると妻もこどももきれいめな格好に着替えていた。
「えっと、今日何かの記念日?それか誕生日?」
「お父さん、去年も同じこと聞いてたね」
「忘れちゃったの?」
妻のほうを見ても微笑むばかりで答えを教えてくれる気配はない。1年前の今ごろに何があったか頑張って思い出してみると、ちょっと豪華な晩ごはんとケーキが出てきた日があった。同じようなことをこどもたちに尋ねて返ってきた答えは。
「……父の日?」
「あたり!」
「早く行こ!」
こどもたちにぐいぐい引っ張られながら玄関へ向かうのを、妻はおかしそうに笑っているのだった。

6/17/2024, 4:07:48 AM