RAKT

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霧が街を覆い、路面電車の光だけがぼんやりと通りを照らしていた。

彼は一人、石畳を踏みしめながら言った。
何かイヤな気配がしたのだ。

「誰かいる…?」

答えは返ってこない。

だが、背後の霧の中で微かな足音が重なる。

振り返ると、そこには誰もいない。ただ、壁に映る自分の影がひとつ増えていた。

思わずその場から、逃げ出していた。
あの足音は何?影は何?
考えると、鳥肌が止まらない。
確実に何かがいた。

スマートフォンで街の防犯カメラを確認すると、数秒前まで映っていた人影が、今は画面の中でじっとこちらを見返している。

胸が早鐘を打っている。背筋に冷たいものが流れた。

「誰か…じゃない、あれは自分…でも、違う。」

足音は徐々に近づき、霧の向こうで低い声が囁いた。

「ずっと見ていたよ、君が来るのを」

その瞬間、街の光が全て消え、ただ一人、霧の中に溶けた影と向き合った。

どっちが自分だったのだろうか…
誰か、教えて下さい

10/3/2025, 11:35:17 AM