あたしは この日のために
ありとあらゆる ことをした
肋が浮くまで 働いたし
悪い仲間と 取引をした
財産は 全て売った
どうしても どうしても
見たかった
この青い空を
人類は 第三次世界大戦ってやつで
半分が死んだ
大型の核が何回も使われたから
放射能だらけで 地上にいられなくなった
シェルターに逃げ込んだ一部の人類と
数種類の動物だけが 生き残った
生き残ったはいいものの
偶然シェルターに入り込めた
私のような貧困層には 辛い日々が続いた
空は大気汚染で汚れて
清浄化するのに 何十年もかかった
元に戻った地上に出るには
うんとお金が必要だった
やっと見ることができた
青い空
でもあたしには分かる
あたしには もうあまり時間がない
お金持ちに
臓器も売ってしまったから
あたしは
眼球と脳だけになってしまったのだ
そして 培養液越しに 青い空を見ている
だんだん 景色が掠れてきた
連れてきてくれた人に 御礼を言いたいけど
それもできないから仕方がないか
青い空 ずっと続いている
もう涙腺もないのに 涙が出そうなの
全てを売った価値があった
この青い空
見れてよかった
あたしは もうない瞼を閉じた
なにもなくなった
戦争なんか なければよかった
さようなら…
10/23/2022, 1:12:03 PM