『追い風』
私には夢がある。それは、国民的アイドルになること。
きっかけは八歳の頃、姉に連れられて行ったアイドルのライブだった。
あの舞台で歌って踊る、綺麗で輝かしい女性たち、観客の一体感、そのすべてに魅了された。私もこんな風に輝いてみたい、心の中で何度も叫んだ。
私はその日から、歌とダンスの習い事を週六でこなし、暇さえあればアイドルのライブ動画を見漁って、表情管理や振り習得の練習をしていた。おかげで友達は一人もいなかったし、成績も酷いものだった。それでも、アイドルになりたいという強い思いで、一度も弱音を吐かなかった。
だが、思っていたよりも現実は厳しく、オーディションを受けては、毎回二次審査で落ちてしまっていた。
こんなに努力しても駄目なら、もう無理かもしれない。そんな言葉が頭をよぎる。世の中には、努力しても報われない人が山ほどいる。私もその部類なのだろうか。
いや、そんなことない、きっとまだ努力が足りないのだ。努力し続ければ、きっと夢を叶えることが出来る。そう思いながら前を向く。
私は今日も、追い風に吹かれながら、夢に向かって走り続ける。
1/7/2025, 2:19:25 PM