嫌いだった。
君の手が、君の顔が、君の声が、君の目線が。
君の、何もかもが嫌いだった。
こっちを見て柔らかく微笑むのも、いつもその透き通った目を合わせて話してくるのも、弾むような、いやに心地のいい声で私の名前を呼ぶのも、しっとりとしたささくれ一つない指先で私の手をとるのも。
君の全部が私の心のやわらかい部分にひどく鋭い痛みとなって刺さるのだ。貶すところひとつないような君を見る度に、自分の中にある醜さに気付かされるのだ。
きっと君だって私がどうしようもないやつだと気付いているだろうに。なのにどうしてそんな目を向けるのだ。君のせいでおかしな勘違いをしてしまいそうになるじゃないか。全てが許されて、肯定されているような気になるじゃないか。
君といると知らないうちに泣きそうになるから。
君といるとどうしても叶わない欲が出てしまうから。
これ以上自分が醜さを露呈させる前に、どうか、どうか優しい君を嫌いだと思わせてくれ。
【優しくしないで】
5/2/2023, 6:01:25 PM