ストック1

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砂時計の音は聞こえない
しかし、たしかに砂の流れる音は鳴っている
ただ、小さすぎて耳に入らないだけだ
俺の仕事もそう
誰の目にも止まらないが、存在はしている
違うことといえば、砂時計の音は存在していようといまいと大した差はないが、俺の仕事はなくてはならないという点か
なんの仕事をしているかって?
なに
普通の人間がいちいち気にするような内容じゃない
それでも知りたいというのなら、話してやろう
多くの人は知らないが、世の中にはある条件を満たすと誕生する怪異ってやつがいる
大抵の場合、それは人に害を及ぼす
だから、誕生した場合は専門家が速やかに排除することになってるんだ
だが、俺の仕事はそんな派手なもんじゃない
大切な仕事だが、やることは地味なもんさ
俺の専門は、怪異誕生の阻止だ
街中を探して、怪異誕生の条件を満たしそうな場所をいじって、未然に防ぐのさ
それはその辺の石の位置を変えるとか、ポイ捨てされたゴミを拾ってゴミ箱に捨てるだとか、そういう些細なことだ
空き家の朽ちかけた家具を完全にぶっ壊す、なんてのもあるな
怪異は妙な条件で誕生する
普通じゃわからないような、なんの変哲もない物のちょっとした位置関係とかでな
むしろ、誰かがわざと意味有りげなことをやって発生する怪異なんてものは、まず存在しない
それが逆に厄介なんだが、その厄介を解決するのが俺ってわけだな
とはいえ、どうしても全ては防ぎきれないから、怪異を排除する専門家も必要なんだ
ま、彼らの仕事が増えるか減るかは、俺や同僚の働き次第だ
俺のやってることは、地味で目につかない仕事だが、人々の平穏を守れるってのは、すげえ気持ちがいいもんだぜ?
あんたも、興味があるならやってみるか?
責任重大だが、意外と危険は少ないんだ、この仕事

10/17/2025, 10:58:22 AM