池多美夏人

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『仲間』
ずっと仲間が欲しかった。
子供の頃から誰からも仲間に入れてもらえず、いつも一人ぼっちだった。
実の親すら味方にはなってくれなかった。
そんな状況が何年も何十年も続き、気がつけば大人になってからも一人ぼっちだった。
日常の悩みを相談できる人もいなければ、他愛もない事を話せる人もいない。一日一日が空虚だった。
もう死のうか。そんなことを考えていた時、偶然すれ違った二人の男から声をかけられた。
「仲間が欲しいんだ。一緒に仕事しないか?」と。
仲間にしてくれるなら、そう思って誘われるがままに彼らと共に働き始めた。
リストに載っている老人に電話をかけてマニュアル通りに話すだけの仕事だった。
こんな簡単なことをするだけでも彼らは喜んでくれて、褒めてくれて、本当に嬉しかった。ようやく仲間というものを手に入れたのだと思った。
でも、そんな幸せはある時木っ端微塵に吹き飛んだ。
突然警察が踏み込んできて、全員手錠をかけられた。
そして刑務所に入ることになった。仲間だと思っていたものは他人を傷つける怪物だったようだ。
いつか本当の仲間を手に入れることはできるのだろうか。少なくともここに居る間は無理そうだ。

12/10/2024, 3:42:03 PM