とある恋人たちの日常。

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 愛しい彼女が命がけで産んでくれた天使を初めて見た時の感動は忘れられない。
 
 そんなことを胸にしながら、彼女と天使に会いに行く。
 
 天使に会いに行った後、彼女の顔を見に行くと俺に向ける笑顔がいつも以上にキレイで……。恋に落ちた時よりも胸がときめいてしまう。
 
 母親になった彼女の美しさに目も心も奪われる。
 
 昼間だから窓からの光が入り込んでいて、より彼女の神々しさが増していた。
 
「どうしました?」
 
 俺が彼女に魅入っていたのをボンヤリしているように感じたのか、首を傾げて言う。
 
 俺は首を横に振り、彼女の傍に近づいて手を取った。
 
「お母さんになった君が綺麗で愛しくて」
 
 驚いて見せる顔は、俺がよく知っている恋人の顔。
 それなのに、間を置いて微笑んでくれる表情は恋人とは違う笑顔なんだ。
 
 やっぱりキレイだ。
 まだ出産直後しか天使と一緒にいる姿は見ていないけれど、二人一緒に居るところを見たら幸せなのは間違いない。
 
「退院したら、一緒に頑張ろうね」
「はい!」
 
 ――
 
 色々と話し合ったあとに病院を後にする。
 ひとりになるのは寂しいけれど、退院したらふたりで天使との生活が待っている。
 俺はそれが待ち遠しい。
 
 帰り道を見つめるとキラキラしているように見えた。
 
 どうしてもなにもない。
 この世界は俺の愛しいもので溢れてる。
 
 そう思うと口角が上がり、ステップを踏みながら家路に着いた。
 
 
 
おわり
 
 
 
三八九、どうしてこの世界は

6/9/2025, 2:08:08 PM