星が溢れるほどくさん詰め込まれたガラスの小瓶をバスケットいっぱいにして一人の少年は、街へ繰り出た。
「星は、いりませんか?願いを祈って空に還せば何でも叶う星は、いかがですか?星10個を金貨3枚で売っています。」
みずぼらしい服を着た少年が高らかに声を上げると周りの人々は、縋り付くようにその少年に銀貨を渡そうとする。わたしがさきに、ぼくがさきに、と争う声が聞こえると少年は、わざとらしく咳払いをしたあと
「ちゃんと列に並ばない人には、あげませんよ」
と子供を叱りつけるように言った。
「はい、最後の一瓶です」
その瓶を渡された女性はひどく安堵し、その後ろに並んでいた人は、泣いて悲しんでいた。
少年は、帰り道にひとり、うわ言のようにつぶやいた。
「この街でも、もう人気が出てしまったな。次は、どこに行こうか。そうだ、雪の降っている場所なんかはどうだろう?きっと寒さで凍るのを恐れた人は、誰も星を買いになんて来ないだろうからな!」
名案だ、と自画自賛をした少年は、家につくと早速身支度を始めた。
持っていくのは、沢山の星と自分の体だけ。
「全く、何故これが人の命を代償にできているってこと忘れちゃうのかな?それとも知っていて星を買うの?自分たちの都合のために人の命を使うなんてばかみたい!」
呆れた少年は、見落としている星がないことを確認して家を放りだした。
新しい街は、予定通りごうごうと冷たい風が吹きすさむ場所だった。星が溢れるほどくさん詰め込まれたガラスの小瓶をバスケットいっぱいにして一人の少年は、街へ繰り出した。
「星は、いりませんか?願いを祈って空に還せば何でも叶う星は、いかがですか?星10個を金貨3枚で売っています。あ、これは、人の命からできているので大切に扱ってくださいね。」
……やっぱり誰も来ない、最初は、どこもそうだ。ここからお客を増やさないためにどうすればいいか、そう考えているとぎぃ、と何かが開く音がして、その方向を見ると一人の女性が分厚いドアの後ろから顔を出していた。
「何でも叶う…って本当?」
「えぇ、生命を生き返らせる事以外なら」
その女性が扉から出てきて金貨を3枚手渡した。それを少年は、受取り、瓶と交換した。
「これで、娘の病気が治るのね…」
そう独り言を言いながら自宅へ帰っていった。
それからは、日を追うごとにやってくる人々が増え、少年は、帰り道ため息を付いた。
「ここも、もうだめか」
そして、次は、どこに行こうかと考えた。
少年は、自身の手元の星が尽きるまで、配らなければならない。そうして、全部の星を配り終わったら自分も星になるんだと、そう神様に聞かされて生きてきた。
「ふふ、この星たちは、どんな使い方をされてお空に還れるんだろう。」今まで不幸な子たちは、何人も見てきた。沢山の人に買われれば買われるだけ不幸な子たちは、増えていく。
「まぁ、何度だってきれいな色になってお空から流れてくるのだけれどね。」そう言って少年は、大きく地図を広げた。
「何度も使い古されて、無理矢理きれいな星に戻されて、自分の好きなところに行けないくらいなら星が尽きることなんてなくていいもんね!」
少年は、自分が星にならないようにここ200年行っていない場所を探した。
あれからXX年後高らかと街の中心で声を上げた少年がいた。
「星は、いりませんか?」
3/15/2024, 11:14:30 AM