空に霞みなく、青ひとつ。
惹かれる心も、唯ひとつ。
人の世を彩る、百花繚乱。
誇り魅せるは、古来の美。
花の森に棲む妖精たち。
そこは、ある時期になると大きな客人(まれびと)たちが訪れる。
小さな住人らは好奇心で彼らを見上げてみると、誰もが一目でもこの催しにと賑わっていた。
三色のチューリップで埋め尽くされていれば、ネモフィラやタンポポなども鮮やかに咲き渡っている。
皆、この夢の園に導かれ、この豊かさを讃えている。
妖精たちも、自分たちの世界を胸を張って誇っている。
そう、十人十色な客人を眺めていると、一人の子供がしゃがんできた。
それを見て初めはたじろいだり、茎の裏に隠れてたりもした。
しかし、何もしてこないと分かると、妖精たちはゆっくりと前に出てきた。
短いお下げを垂らした、夢見る瞳の女の子。
小首を傾げて見つめるその子に、一人の妖精が手を振ってみせた。
すると、女の子も白い歯を覗かせ、片手で小さく振り返した。
その純粋な心意気に顔を合わせ、不思議な小人たちはぴょんぴょんと跳ねた。
「何か見つけたの〜?」
母親らしき、優しく包むような声色が隣で話しかけた。
穏やかな巨人に見上げると、微かな間を空けてから目を細めた。
「なーいしょー」
「え〜内緒ー?」
んひひ、と無邪気な姿に、妖精たちも肩を寄せてつられて笑みを浮かべた。
「あっちも行ってみよっか」
「うん!」
子供は立ち上がり、声の主に導かれるがまま離れていった。
地を踏む音が遠ざかるのを妖精たちは見守る。
なにやら、ほんの少しだけ寂しそうだった。
自分たちを相手してくれる巨人はめったにいない。尚更、このひと時は貴重なものだ。
ほんのりと再会を望んでいると、去ったはずのあの子供が再び近づいてきた。
しゃがんで、つぶらに見つめ、また小さく手を振ってきた。
「またねー」
短い出会いに、しばしのお別れ。
小声で契った言葉に、俯いていた彼らもまた笑顔で手を振り返した。
絢爛、世界は虹の園。
そよ風で揺れる花の森。
福も花びらも空に舞い、
妖精たちは輪になって踊る。
【フラワー】
***
ルビ振れるようになったらいいよネ。
4/8/2025, 11:21:01 AM