そこに彼女は居た。
「もう帰るよ」
僕がそう言うと彼女はいつもこう言う。
「まだマスターを見つけていません」
「うんまた明日来よう。」
静寂に包まれた施設の一室に
今日と変わらない姿で
立っていた彼女を見たのはもう15年も前だった。
「本当にマスターは居るの?」
「マスターは誰?」
「なんでマスターを待っているの?」
いろいろ聞きたいこともある。
でももう見たくないと思ったんだ。
静寂に包まれた部屋で立つ彼女は今よりずっと
消えてしまいそうだったから
─────『静寂に包まれた部屋』
9/29/2024, 11:10:21 PM