【遠い日の記憶】
物心ついた時からずっと、脳裏に焼き付いて離れない景色がある。バカみたいに青い空の下で、誰かが頬杖をついている。僕へと視線を向けてにこりと笑ったその人は、楽しそうに口を開くのだ。
『 』
声も聞こえない、顔も見えない誰か。だけどきっと、僕にとって大切だったはずの思い出。こんなことを言ったら周囲には呆れられるだろうけれど、それでも僕はひそやかにこれは前世の記憶なのだと信じている。
(早く会いたいな)
きっと君に会えば、思い出すことができるはずなんだ。遠い遠い日の記憶を反芻するたびに胸を締め付ける、この愛おしく切ない感情の正体を。
夏の日差しに手をかざし、ペットボトルの水を勢い良く飲み干して。そうして僕は、君を探すための旅路の歩みを再開させた。
7/17/2023, 12:32:14 PM