『星明かり』
きみの顔が、うっすらと明るい夜空に照らされる。普段と同じ帰り道なのに、胸が締め付けられるように痛くて、拳をぎゅっと握ると思わず爪を食い込ませてしまう。
今日こそは伝えると決めていた。きみに対する、たった二文字では言い表せないほどの、大きくて複雑で少し切ないけれど温かい本当の気持ち。ぼくが抱えている、いちばん大きな隠しごと。
今日こそは……そう決めていたのに、ぼくは中々切り出すことができない。
「今日は、星が綺麗だね」
きみから目を離し、空を見上げる。暗い紺色に散りばめられた無数の欠片が、ほんわりと辺りを照らしている。澄んだ空気が涼しくて、柔らかく髪を撫でる風が心地よい。
たった一つの夜空さえいつもと違うように感じられるのは、隣にきみが居るからだろうか。
ぼくは息を吸い込むと、やっと二文字を口にした。
4/20/2025, 2:12:08 PM