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幼い頃、僕は近所の神社の
ぐにゃりと曲がった松の木に登るのが好きだった
水平に円を書くように曲がった幹は
今じゃ不躾だって失笑してしまうけれど
腰掛けるのに丁度良くて
よくそこに座ってただぼうっと遠くを見ていた
下では当時出来たばかりだった団地の子供達が
こぞって集まって遊んでいて
その笑い声と何処かから漂う夕ご飯の匂いと
遠くから聴こえる夕焼け小焼けのチャイムと
たった一人の僕と
確かに寂しいのに、どこか落ち着くような心地で
僕はその光景が好きだった

今ではもうその松の木は
あっさりと切られてしまって
新しく出来た公園に子供達は吸い寄せられ
神社は夕方になっても伽藍堂になってしまった
ただ西向きの僕の部屋からは
夕日が真っ直ぐ入り込んできて
部屋を橙に染め上げて
窓辺の植物が影を落とすその様を
やはり僕はぼうっと見て
この時間が一番好きだ、と思うのだ

10/1/2023, 3:28:30 PM