初心者太郎

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今日は退院日。僕の人生に一年間の空白ができてしまったけれど、この病院のお陰で外に出られる。ありがとう。

「守、よく頑張ったね。今日は守の大好きなハンバーグ、家で用意してるからね」

お母さんは涙目になって、本当に嬉しそうに笑った。
僕も嬉しいよ。
一年前、僕は友達と遊んでいた時に、うっかり足を滑らせて、崖から落ちてしまったらしい。

入院すると決まった時、僕は目を覚ますか分からない状態だった。お医者さん、看護師さん、お母さん達の力があったから今の僕はいるんだ。

「本当にありがとう、お母さん」

本当に、本当に、感謝してもしきれない。

「あぁ、きっと神様のお陰だわ。お母さんね、毎日神様にお祈りしていたのよ。守が目を覚ましますようにって」

神様か。神様なんて今まで信じていなかったけれど、僕も信じてみようかな。

山野君、岡君、渡辺君、元気にしているだろうか。入院する前、毎日一緒にいたクラスメイト。学校がない日も、いつも一緒だった。


三人とも仲が良かったよね。


目を覚ました時は記憶が曖昧だったけれど、今はもう全てを思い出したんだ。


毎日、僕で遊んでいた三人。
あの日、君達は僕を突き落としたよね?
僕にできた空白の一年間を、どうやって取り戻そうか。

「お母さん、僕も神様を信じてみるよ」

どうか上手くいきますようにと僕は神様に祈った。

お題:空白

9/13/2025, 1:49:04 PM