幼い頃は、烏になりたかった。
真っ黒で、艶めいて、夕日に向かって飛んでいく彼らが落としてくれた風切羽。
それを拾い集めていれば、いつか俺もそれを身に纏い、彼らと共に飛んでいけると思っていた。
今も見つけたら集めてはいるが、烏に本気でなれるとは思っていない。
高校生の時は、ただ一人になりたかった。
静かで、孤独で、しかし、誰にも邪魔されずに本を読んでいられる。
そんな世界にいられたら、きっとこんな自分でも生きていけると思っていた。
別れを告げた者たちも、今も共にいてくれる者たちも、どちらも、総て人生には必要不可欠だったと思う。
今は、このぼんやりとした夢を、どうにもならない現実の狭間で見ていたい。
どうだろうか。あまりにも厳しくて恐ろしい現実に尻込みして、曖昧な夢など押し殺してしまうだろうか。
まぁ、なんだかんだここまで生きてきた俺なら大丈夫、という確信もある。
夢と現実
12/4/2022, 11:22:55 AM