千冬

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 私はもう永くない

 これといって病気がある訳でも無く、身体は今日も通常運転だが、なんとなく、そんな予感がするんだ。
 ただ、毎日、着実に、寿命が減っている感じがするというだけ。実際、減ってはいるだろうから、当たり前と言えば当たり前なのかもしれない。
 …せめて、いつこの世界から消えるとしても、後悔の無い様に、生きようと思う。

 度々、結局いつか死んでしまうのなら、いっその事早く死んでしまった方が良いのでは無いか、と思う事がある。
 それでも私が生きているのは、この世界に文学があるから。
 本を読もうと思う。数え切れないくらいの本を。そして自分の世界を広げる。
 まだ私には語彙や表現方法が少ない。義務教育ももう終わりに差し掛かっているのに、習った漢字を全ては書けない。
 私よりもひとつ下の女の子が、書いた小説を見せてくれた。それを読んだ瞬間、えも言われぬ高揚感に包まれた。私の書く小説よりもよっぽど面白かった。一般語彙に絞って書いてくれたんだそうで。彼女の表現力はそのままに、読み易い文章に仕上がっていた。学校という空間をああも読者に飽きさせず描写できるという事に感動した。
 いつか絶対にものにする。彼女の表現も、数々の文豪の表現も、全ての文学を取り込んでみせる。死ぬのはそれからでも遅くは無いだろう。

10/21/2025, 11:42:40 PM