ピーッ、ピーッ、ピーッ。「誰か先生呼んで!」「手術室の手配出来た!?」「はいっ、あと数分で──」
幾度聴いたともしれぬ騒音が鼓膜を貫く。
ベッドサイドモニタのアラーム音。怒鳴りにも近い、看護師たちの緊迫した声。その中心で、沈黙を貫くひとりの少女。ああ、耳が痛い。
少しして、白衣を身にまとった男性医が訪れる。心なしか早足だった。
「患者の容態は?」
「心臓が止まってから四分です! 未だに心拍、意識ともに戻りません!」
「手術室の手配は?」
「あっ、空きました! C室いけます!」
患者の少女──私の娘を乗せたストレッチャーが、ガラガラと音を立てて目の前の扉へと吸い込まれ、そして閉じられた。
私は、両手と瞼にぎゅうと力を込める。
嫌な汗が背中を伝うのも、胃のあたりに鈍い痛みが走るのも無視して、ただ一心不乱に願う。
もしも、この世に神様とかいうものが本当にいるなら、どうか聞き届けて欲しい。
もう一度、あと一度だけでいい。
あの子を救ってくれ。
かつて余命宣告された幼少の私が救われたように、あの奇跡をあの子にも与えてください。
▶奇跡をもう一度 #23
10/3/2023, 9:13:54 AM