『手紙の行方』
高校三年生の春、君と僕は別れた。
君と出会ったのは高校一年生のとき。
入学したてでざわめき立つ教室の中、一人静かに本を読む君に目を奪われた。
窓の外の桜を背に、散る花びらを浴びながら君はゆっくりページをめくる。その姿が頭から離れなかった。
そのまま猛アタックを続けたが何度も玉砕。
これを最後にしようと二年生のときにもう一度君に告白をした。
「私の事、そんなに好きなの?」
そう言って君は微笑み、今度こそ僕の想いに桜が咲いた。
君と付き合っていたこの一年幸せだった。
本当に幸せだった。
誰よりも優しい君が好きだった。
僕の心を春の麗らかな日差しのように穏やかにしてくれる人だった。
君が僕に別れを告げた2年後君は亡くなった。
心臓の病気だったんだってね。
だから僕を傷つけないために別れようって言ったんだよね。やっぱり君は優しいね。
ねぇ、あのとき、君との一年記念でね、手紙を書いてたんだ。
渡せないまま別れちゃったからずっと僕の手元にあったんだ。
紙飛行機にして空にいる君に飛ばすよ。
この手紙の行方は分からなくなるけど、きっと君に届くと願ってる。
2025/02/18
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2/18/2025, 1:36:42 PM