その昔、人の世には人間の他に、黒い羽を持つ者たちと白い羽を持つ者たちがいた。
黒い羽を持つ者たちは、真実をもって人間の弱さや悪行を厳しく戒めていた。白い羽を持つ者たちは、優しい嘘をもって人間の心の安定や善行を促していた。
人間が全ての生物の上に立ち、高尚な存在であった頃はそれで良かった。
時が経つにつれて人間は堕落した。
黒い羽を持つ者たちは人間を激しく非難したが、愚かな人間は黒い羽を持つ者たちが示す真実を受け入れることができなかった。人間は思い上がった感情のままに、怒りの矛先を黒い羽を持つ者たちに向けた。
白い羽を持つ者たちは、人間の堕落を知ると地上から姿を消した。
黒い羽を持つ者たちは、それでも人間を信じ、人間に対して厳しく言い聞かせ続けたが、もはや獣同然となった人間は、その言葉を理解しようともしなかった。
黒い羽を持つ正直者は「悪魔」と呼ばれるようになり、現在でも人間から迫害され続けている。
(正直)
6/2/2023, 11:37:17 PM