かたいなか

Open App

今回は、先代ルリビタキとドラゴンのおはなしとは、違う場所に目を向けてみましょう。
「ツバメ」というビジネスネームを与えられたドラゴンが、ぐぅすぴ二度寝を決め込んでおる頃、
昔々、だいたい数十年ほど前のおはなしです。

「ここ」ではないどこか、なにか不思議な場所で、
1匹の「仕組み」が、滅んだ世界の魂を、
ぺろり!もぐもぐ。
食べ終えました。

そのシステムは滅んだ世界の掃除役でした。
そのシステムは滅んだ世界のリサイクル役でした。

「それ」は、滅んで熟した世界を食べて、新しい世界が生まれるスペースを作ってやって、
そして、「それ」が毛づくろいして光り輝く宝石を吐き出しますと、
その宝石は空を昇って、宇宙も昇って、誰も知らない場所まで昇っていって、
そこで、滅んだ世界の魂たちは、新しい世界に生まれ変わるのでした。

ひとつの世界はひとつの本、ひとつの日記。
滅び閉ざされた日記の中には、
かつて在り、間際まで在り、滅ばなければ在る筈だった過去たちがいっぱい。
「それ」は要するに「閉ざされた日記」を食うことで、魂を次の日記へ、リサイクルするのでした。

ところで最近、時折、滅んだ世界の味にパンチや深みがありません。
いつもなら、滅ぶ直前であっても、知的生命の生きた魂が1千なり2千なり、残っておるのです。
なのに最近、時折、この「生きた魂」が1個も残っていない世界を、食うことが増えてきたのです。
まるで生きた命がどこかに逃げてしまったような。

『んんー。今回の世界も、美味いけど、なんかパンチが足りねぇんだよなぁ』
どうしちまったんだろ。
まったく、どうしちまったんだろ。
滅んだ世界の掃除役、閉ざされた日記のリサイクル役は、ペロペロ、ぺろぺろ。
食後のルーティンとして毛づくろいなどしながら、不思議がっておりました。
『ここまで生きた魂が不作なこと、あったかー?』

カッ、カッ。猫が毛玉を吐き出す要領で、「それ」が宝石を吐き出します。
『生きた魂が少ねぇから、出てくる毛玉も最近、色も輝きもちょっと薄くて、生まれる世界がかわいそうになってくるぜ』
どうしちまったんだろ。
まったく、どうしちまったんだろ。
吐き出した毛玉、もとい、新しい世界の種をじっと見ておったところ、

視界の片隅で、
滅びそうな世界から、
まだ元気な世界に向かって、
膨大な量の生きた魂が流れていくのを見ました。

『ははぁーん?そゆことー?
この俺様に食われる栄誉から、逃げたいわけだ?』

それは、前回投稿分で名前が登場した組織、世界多様性機構による、
滅んだ世界から生きている世界への、知的生命体の大量脱出でした。
滅んだ世界が消え去る前に、生きている者たちを延命させようとしている瞬間でした。

つまり閉ざされるべき日記の中から
既存の過去たちを新しい日記に無理矢理ドババ!
強制インポートようとしておるのです。

『まぁ、どこまで逃げようと、どれだけ逃げようと、
最終的に俺様のハラの中に入るんだけどねー』

それが、シモジモの者どもは、分からないんだろうねぇ。ヒヒヒ。
滅んだ世界の掃除役は、ふわわ、あくびなどして昼寝の体勢。
大きな大きな猫みたいな、あるいは少し小さなモフモフドラゴンみたいな、ともかく人外のナニカは、
次の美味しい世界の味を想像しながら、ぐぅすぴ、かぁすぴ。寝息をたてました。

閉ざされた日記、閉じるべき日記のリサイクル役のおはなしでした。
このリサイクル役もやがて、前回投稿分で登場した組織「世界線管理局」に入局して、「スフィンクス」というビジネスネームを貸与されるのですが、
その辺のエピソードは、また数日後のお題で、ごにょごにょ。 おしまい。

1/19/2026, 5:35:51 AM