白糸馨月

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お題『カラフル』

 私はいつもねずみ色か、カーキ色とか、黒しか着ない。なぜなら、その方が間違えがないから。
 だが、そんな時に服飾学部と思わしき生徒から声をかけられた。彼が身に纏う服は、目にも鮮やかなカラフルだった。
 最初、私に声がかかるなんてなにかの間違いだと思ってた。なぜなら私はというよりも、私が所属する理学部は地味で通っているから。化粧しても一重瞼は化粧映えしない。髪を短くしているのはその方が楽だからだ。

 だが、彼に連れられて鮮やかな服を合わせられて着せられた私の姿はいつもと違うものだった。
 鏡の前でメイクをほどこされ、彼に「ちょっと立ってみて」と言われて立って、うながされるまま全身が映る鏡の前に立つ。
 そこには、いつもと違う自分の姿があった。

「えっ……」

 驚く私の横からデザイナーの彼は、私の横に並び立つ。

「やっぱ、俺の見立ては間違ってなかった」
「なんだか変な感じなんだけど」
「だって、君はいつもじっみぃーな服を着てるじゃん、もったいない。せっかく背が高くてスタイルよくて、顔もキリッとしてるのに」
「もったいないって、私よりも可愛い子は他にいるじゃない」
「いーや、俺は君が良かったんだよ。大学の構内探してもなかなか理想のモデルが見つからなくてね。そんな時に君が現れたんだ」

 それから、彼は真剣な顔をして言った。

「今度の文化祭のファッションショーがあるんだけど、出てほしいんだ」
「え?」
「俺、優勝狙ってて。君の力が必要なんだ」

 そう言って、彼は手を差し出してくる。髪の色も服装もカラフルで独特な雰囲気をかもしだす彼だが、熱意は本気のようだ。
 私は

「わかった。よろしくお願いします」

 と彼の手を取った。

5/2/2024, 12:20:21 AM