「唇が荒れてるかも」と『君は今』リップスティックを取り出してくるくると底を回してのせている。艶のなかったやわらかく、ぽてりとした唇がひと塗りで輝いた。その様子に釘付けで
「そんなに見られると恥ずかしいな…」
伏し目がちに言われるものだからますます目が離せない。
「新しいやつ?」
「うん、香りがついてるの」
差し出されたリップスティックに鼻を近付ける。俺が使う目の覚めるような物とは違う、女の子って感じの甘い香りだ。ただ何の香りかまでは当てられなかった。
「唇、荒れたりしないの?」
「最近は荒れないな。口の中を切ったりすることはしょっちゅうだけど」
仕事絡みで、まぁ色々と。口の中を切る想像をした君は一瞬固まってから、羨ましいと視線で訴えられた。荒れなくなったのって君と付き合ってからだ。
「君が分けてくれるから」
「奪ってるの間違いじゃないの?」
「そう言う口は塞ぐことにしようか」
顎を捉えて唇を奪う。君の唇はミルクのような甘い香りがして、見た目ほどベタベタしてはいなかった。
悪くない。感触がマシュマロを思い出させたからだろうか。口を合わせるだけでは飽きたらず、最後にはむり。と
『君は今』どんな顔をしてるかな?
2/27/2023, 3:42:33 AM