※ちょっと注意かも
「無垢」とは、けがれの無い純真を示す言葉だ。
欲に塗れ、罪を重ね、嘘をつき、日々穢れていく人間には程遠い言葉。
………そう思っていたのだが。
「ほら見て!きれいに取れたよ!」
今わたしの前に居るこの子は、かわいらしい瞳を普段以上にキラキラと輝かせながら嬉しそうに笑っている。
その笑顔には、一遍のけがれもない。
「そうだね。綺麗に取れたねぇ」
わたしがそう応えると心底嬉しそうに、きれい!きれい!と言いながらお気に入りの前にまた座り込んだ。
純粋な好奇心と興味、正直な気持ちと飽くなき探究心に溢れた子。
もし天使が実在するのなら、この子のような存在だろう。
わたしのような穢れきった存在には眩しいくらいだ。
願わくばどうか、この純粋無垢なまま成長して欲しい。
「見て!赤いのたくさん!」
夢中になっていたのだろう。
そういってコップを見せてくれる本人は、あちこちに赤い汚れを沢山付けている。
これはあとで洗うのが大変そうだ………床も拭かないといけないしなぁ………
「無垢」とは、けがれのない純真を示す言葉だ。
「けがれのない純真」ということは、善も悪も持たないということだ。
そのような概念は、「無垢」なものにはないのだから。
「さて………穢れまくってる人間はお掃除でも始めますかね」
まあ、最初に汚したのはわたしだしな。
そう独りごちながら、わたしはあの子の周りに散らばっている骨やら肉片やらをどう片付けるか頭を悩ませるのであった。
6/1/2024, 3:14:20 AM