私の夏に、麦わら帽子の姿はなかった。太陽の付け入る隙もなかった。アイデアで埋め尽くされたルーズリーフの片端。髪と手先に染み付いたアクリル絵具のにおい。クーラーから流れるひんやりした風。描きかけのキャンバスから投げかけられた視線。そういうものたちで、私の夏はできていた。沈殿した思い出を美しいものにしてしまう、あの日々。私はあの美術室に、夏を忘れてきたのだ。
8/11/2024, 11:25:50 AM