Ayumu

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※BL要素がありますので苦手な方はお気をつけください。

 今日はありがとう、なんてメッセージを送ったら、五分後くらいにその主から電話がかかってきた。
「どうした?」
「……どうしたって、どうもしないよ」
「うそだね。いつもはこんなメッセージ送ってこないじゃん」
 ああ、やっぱりわかりやすかったか。いや、彼が鋭すぎるんだと思う。本当に、おれ自身に関してはエキスパートだから。
「いや、本当になんでもないんだ。今日は本当に楽しかったから、ふわふわした気持ちがまだ残ってるんだよ」
 最近、珍しく仕事が忙しくなってしまって、職種が全然違う彼とは全く時間が合わなくなってしまった。一応電話やメッセージのやり取りはちょこちょこしていたけれど、やっぱり「生」にはかなわない。
「……ふーん。ちなみに俺は、さんざん一緒にいたのに寂しいなぁって思ってたよ」
「え」
 反射的に声が漏れた。
「やっぱりお前も同じ気持ちだったね」
「え、いや……」
「まったく、いつも素直なのに変なところでバレバレの嘘つくよなぁ。やめたほうがいいよ、そのクセ」
 目の前に彼はいないのに、まるで頭からつま先までじっくり見られているようだ。頬が熱くなっているのを感じる。
「だ、だって。ブレーキかけないと、わがままになっちゃうじゃないか」
 なにを言ってるんだと言いたげな反応に、ムキになって続ける。
「君はおれがもっとわがままになっていいっての? 君の都合も考えずに振り回しちゃうんだぞ?」
 おれなら、少しなら甘えてもらっている証拠だと思って嬉しくなるけれど、度が過ぎるとさすがに辟易する。おれや彼に限らず、一般的な感覚だろう。
「まあ、俺は嬉しいよ。そもそもお前、言うほどわがままじゃないじゃん」
 まさかの返答だった。
「今日だって、寂しいから別れたくないって言ってくれたら全然泊まったし」
「い、言えないよ。おれは休みだけど君は仕事でしょ」
「俺んちに泊まるでもよかったんだけど?」
「どっちにしろおれの理性がもたない!」
 軽く吹き出された。
「も、もたないって。ぶっちゃけすぎだろ」
「しょうがないでしょ恋人と一緒に寝たら!」
 もう、なにやってるんだろう。こんなことならメッセージなんて送らなきゃよかった。彼の聡い性格をうっかり忘れた罰だ。
「いい加減もう寝るよ。ごめんよ、こんなくだらないことに付き合わせて」
「まあまあ、落ち着けって。おかげさんで、前から考えてた計画を実行すべきだってわかったよ」
 計画? また話が読めない。
「もう俺たち一緒に住もう。そうしたら今より寂しくなくなるし、帰る場所が一緒になるしで、いいことづくめ」
 あまりの大告白に返答できないまま、詳細はまた話すと言い残して通話は切れた。
「……ちょっと、ますます、寝れないじゃないか」
 明日が休みで、本当によかった。


お題:眠りにつく前に

11/3/2023, 7:02:23 AM