ひとりきりの夜には、いつもあの人を思い出す。ふと思い立って外へ出てみると、夜のせせらぎが静かに流れていた。普段は見えない小さな星たちも、今日は瞬いている。ああ、そうか。今夜は月食だった。無数の星に照らされて、月が赤く染まっている。この月を、あの人も眺めているだろうか。同じとき、同じことを思い出しながら、同じ空を眺めていたらいいのに。少しだけ皮肉に笑うあの薄い唇を思い浮かべながら、私は赤い月が金色に変わるまで見つめ続けた。
9/11/2025, 2:43:14 PM