この場所で、ほぼ毎日、だいたい同じ時刻に見かけるおじいさん。
本当にいつもいるから、
春はなんだか鼻をムズムズとさせているな
夏は麦わら帽子が良く似合っているな
秋は焼き芋の袋をよく抱えているな
冬はマフラーとダウンでモコモコしているな
なんて、おじいさんで季節感を味わうようにまでなっていた。
ある日の、冬。2月だった。
朝早いシフトの仕事を残業付きで終えて、あくびを噛み殺しながら、「バレンタインフェア」のポスターやらショーケースやらを通り過ぎて駅構内をフラフラと歩いて、あの場所に着いた。
その場所にいたいつものおじいさん。
…の横に、穏やかに笑う、おばあさんがいた。
おじいさんも、今まで見てきた中で一番幸せそうな顔をしている。
そうか。奥さんか。
なんだか、私まで嬉しくなって、疲れが少しだけ幸せの風に吹かれてどこかへ行った気がした。
次の日から、おじいさんを見ることは、一度も無かった。
2/11/2024, 11:33:11 PM