窓から見える銀世界。
その中にひときわ鮮やかに咲いたのは、ひとつの麦わら帽子。
少し歪な雪だるまの上に被せてあるそれは、悲しいほどに眩しく映った。
「これで良かったのかな、なーちゃん」
ぺしょりとこたつに突っ伏しながら独り言ちる。
私一人だけの家にはやけに響いて、いっそ窓を開けて雪に音を吸い取ってもらおうかと思った。
気付くと麦わら帽子に払ったばかりの雪がまた積もり始めている。
「なーちゃんはそのままにしといてって、言ってたけど……」
たまらずコタツを抜け出した時、プルルルルと無機質な音が家に響いた。
タイミングが良かったのか悪かったのか。
「……もしもし、伊藤です」
「あら~沙苗ちゃん!?帰ってきてたのぉ!」
「恵美おばさん、お世話になっております。あいにく家族は今出かけ」
「ね!最近どうなの!ちゃんと食べてる?仕事は順調?あ、彼氏はどうなの!」
8/11/2023, 5:20:07 PM