「…後悔するなよ」
と唐突に彼は言葉を放つ。
「何で?後悔なんてしないよ。」
言葉を返すと、彼は何故か俯いてしまった。
そして、
「ごめんな…。」
ー最悪だ。
よりによって今、こんな事を思い出して終った。
(おい、聞いているのか!)
知らなかったんだ。 殺したのが、実の親だったなんて。
彼奴が、僕と肉親を引き離しやがったんだ。
(御前は何故、殺したのかって聞いているんだ!)
ああ、答えてやるよ。
彼奴を守るためにさ。
あまりにも愚かでどうしようもない僕は、肉親を脅威に感じたんだ。
何であんな馬鹿な事をしたのかと今更ながらに思うよ。
僕達の人生をめちゃくちゃにしてくれた彼奴のために、
家族の亀裂を深めて、もう修復さえ出来ないようにしてしまうなんて…。
……嗚呼、ああ、あああ!!
何で、何なんだ!?
僕達になんの恨みがあるってんだよ!?
(おい!もういい加減にー)
僕は机に乗り出し、捜査官に応えてやる。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ………」
そんな声が聞こえたような気がした。
一体全体誰の声だと考えるまでもなく、私には分かってしまう。
懺悔と憤怒の迸った命の叫びだ。
親殺しの狂った少年の、少年自身と私を糾弾し続ける、果てのない叫びだ。
私だってこんな事をしたくなかったよ、と弁解しても、その声はいつまでも身心を突き刺し続ける。
其れぐらい、犯した罪は重かったのか?
もはや一生、この叫びを私から拭いきる事は出来ないであろう。
「っ…」
後悔なんてそんなちっぽけな物じゃあ無かった。
男は、壊れかけの木箱にもたれかかり密かに哭く。
その涙が堕ちる先は、もう何処にもないのであった。
ー溢れだす気持ちー
2/5/2023, 11:39:57 AM