『目が覚めると』2023.07.10
朝起きてふと心に沸いたのが「今日」だった。
いつものように身支度を整えて、妻と五歳になったばかりの息子に挨拶をし、家族で朝食を囲む。
その後は妻の家事を手伝って、昼から完全にフリーになった。
そして、もろもろの準備をして衛星放送に切り替える。
テレビ画面には演劇が流れている。
その作品は自分が一番よく知っているものだ。
結末はもちろん、稽古期間中になにがあって、自分がどう感じていたのかも。
たまたまその作品が流れているから、あらためて「今日」だと思った。
ここまで色々なことがあった。その色々なことは結果的に良いことになったのだが、どうでもいいことだった。
ぼんやり見ていて、一番好きな場面に差し掛かったので立ち上がる。
そして、テレビを見下ろしながら、ここまでが全て夢であればよかったと思う。
目が覚めると、自分はまだこの作品の稽古中で、明日には初日を迎えるのだ。だから、これは悪い夢なのだと。
悪い夢から覚めるために、自分の名を呼ぶテレビを見下ろしながら、ハッと息を吐いた。
早く悪い夢から覚めたい。
7/10/2023, 1:27:53 PM